「WHO・ユニセフ認定」赤ちゃんにやさしい病院とは?

赤ちゃんにやさしい病院が世界中で注目される理由

出産を控えた妊婦さんや新米パパママにとって、産院選びは人生における重要な選択のひとつです。その中で「赤ちゃんにやさしい病院(Baby Friendly Hospital:BFH)」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。これは単なるキャッチフレーズではなく、WHO(世界保健機関)とユニセフ(国連児童基金)が共同で推進する国際的な認定制度です。

この認定を受けた施設は、母乳育児を中心とした科学的根拠に基づいた支援を実践し、母子の健康を最優先に考えた医療環境を提供しています。1989年に開始されたこの取り組みは、現在では世界150カ国以上、2万施設を超える病院が参加する一大ムーブメントへと成長しました。日本国内でも2024年時点で約100施設が認定を受けており、出産施設を選ぶ際の重要な判断基準として認識されつつあります。

認定取得のために満たすべき「母乳育児成功のための10のステップ」

赤ちゃんにやさしい病院として認定を受けるには、WHOとユニセフが定めた厳格な基準をクリアする必要があります。その中核となるのが「母乳育児成功のための10のステップ」と呼ばれる実践指針です。

これらのステップには、まず施設全体で母乳育児方針を文書化し、すべてのスタッフがその内容を理解していることが求められます。医療従事者は母乳育児支援に関する専門的な知識と技術を習得し、妊娠中から母親に対して母乳の利点やケア方法について継続的な情報提供を行います。

出産後は、医学的に必要な場合を除き、生後1時間以内に母子の肌と肌の触れ合い(Skin-to-Skin Contact)を実施し、母親が赤ちゃんの欲しがるサインを読み取れるよう支援します。母子同室を24時間実施することで、赤ちゃんのペースに合わせた授乳リズムを確立できる環境を整えます。また、医学的に必要でない限り、人工乳首やおしゃぶりの使用を控え、退院後も地域の母乳育児支援グループと連携して継続的なサポート体制を構築します。

認定病院が提供する具体的なサポート内容と実際の体験

認定を受けた施設では、理論だけでなく実践的なサポートが充実している点が大きな特徴です。多くの認定病院では、助産師や看護師が24時間体制で授乳相談に応じられる体制を整えています。

特に初産婦にとって不安の多い最初の数日間、授乳姿勢の調整や赤ちゃんの抱き方、乳房トラブルへの早期対応など、きめ細かな指導が受けられます。単に「母乳で育てましょう」という理念を押し付けるのではなく、一人ひとりの母親の状況や希望を尊重しながら、最適な育児方法を一緒に見つけていくプロセスを大切にしています。

また、帝王切開や早産など、特別なケアが必要な場合でも、可能な限り母乳育児が継続できるよう工夫された支援が提供されます。搾乳器の使い方指導や、母乳バンクとの連携、NICU入院中の赤ちゃんへの母乳提供支援など、状況に応じた柔軟な対応が行われています。

母乳育児以外にも広がる「やさしさ」の本質

赤ちゃんにやさしい病院の真価は、母乳育児支援だけに留まりません。この認定制度の根底にあるのは、母子の絆を最優先し、家族中心のケアを実践するという哲学です。

パートナーや家族が出産や育児に積極的に参加できる環境づくり、母親の心理的サポート、産後うつの早期発見と対応、退院後の地域保健サービスとの緊密な連携など、包括的な周産期ケアの質の高さが認定施設の特徴となっています。さらに、何らかの理由で母乳育児が困難な場合でも、母親を責めたり孤立させたりせず、適切な代替手段を提示しながら寄り添う姿勢を持っています。

出産施設を選ぶ際には、設備の新しさや立地だけでなく、こうした医療哲学やケアの質にも注目することで、より満足度の高い出産体験と産後生活のスタートを切ることができるでしょう。認定病院のリストは日本母乳の会や各都道府県の保健所で確認できますので、施設見学時に具体的な支援内容を質問してみることをお勧めします。

黒川産婦人科医院(公式HP) 盛岡市の産婦人科

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