化学療法または放射線療法による卵巣機能廃絶が予測される女性の卵巣凍結保存および治療後の再移植
妊娠可能年齢の女性にとって、悪性腫瘍や血液疾患により大量化学療法や放射線療法を受ける場合、生殖機能の廃絶(女性ホルモン分泌停止と卵子の死滅)が危惧されます。原疾患の治療により閉経前の女性が卵巣機能を喪失した場合は、のぼせやほてりのいわゆる更年期様症状のみならず、脂質代謝異常、骨粗しょう症、不妊症などの治療も必要です。そのため、挙児希望は叶わないものの、これまでは女性ホルモンを投与するホルモン補充療法が行われてきました。
順天堂医院では健康回復後に子供を望めるという希望を持って、患者様が現疾患のつらい治療に臨むお手伝いができれば幸いと思い、近年、最新の凍結技術を導入し、原疾患の治療医との円滑な連携により、化学療法などの前に卵巣を摘出し、そこから卵子と卵巣組織を採取・凍結保存し、健康回復後に再移植するという治療を行っております。
この方法は、卵巣機能を回復させ、女性ホルモンの分泌により月経再開と移植組織内の卵子による自然妊娠も期待できる画期的な治療法です。さらに、腹腔鏡下で卵巣摘出を行うため、その低侵襲性から原疾患の治療開始までのタイムロスや癒着を最小限に抑え、将来の妊娠に備えられます。一方、この治療法は最新の技術であり、残念ながら世界的にも症例数が少なく、成功率もはっきりとしたものはまだ出ておりません。そのため、治療コストは実費のみで実施しております。
当科では、この治療の専門外来を設置しております。順天堂医院代表(03-3813-3111)、「産婦人科外来」までお問合せ下さい。