腹腔鏡手術は「きずが小さい、開腹期間が短い」など患者さんに優しい手術ですが、手術を行う医師にとっては、「手術するための視野が狭い、距離感がつかみにくい、細長い鉗子の操作が非常に難しい」などの制限がある厳しい手術です。
腹腔鏡手術に限らず、手術操作には合併症が発生する可能性があります。合併症とは、自動車事故や航空機事故などのように、手術中に出血や目的とする以外の臓器損傷など予期しなかったトラブルが起こることです。
腹腔鏡手術では、おなかの中にスコープや鉗子を操作するための小さな孔をあける際に発生する腹腔鏡に特有な合併症と手術している最中におこる開腹手術と同様の合併症があります。
当科では、1993年以来腹腔鏡手術に伴う合併症を記録して、その発生原因を追及し再発を予防する措置を講じて参りました。われわれ医師は合併症を0にすることを目標に診療を行っておりますが、残念ながらその発生率は減少しても0にはなりません。
このページには、われわれがこれまで経験した合併症をありのままにお示しいたします。合併症が発生した場合でも、適切な処置を行って、すべての患者様が後遺症を残すことなく無事に退院いたしました。腹腔鏡手術をお受けになる場合には、これらの合併症が発生する可能性をご理解いただきたいと思います。
術中合併症:術中トラブルにより開腹手術もしくは輸血を行った例→11例
術後合併症:術後に再手術もしくは輸血、処置を要した場合→23例
合併症例=34/5201(0.65%)
輸血を行った例=4/5201(0.07%)
開腹手術となった例=17*/5201(0.32%)(術後開腹オペとなったものを含む)
*腹腔鏡下手術の適応外と判断し開腹手術となった38例を除く
手術件数(laparo + SLL)の年次推移
合併症の年次推移
腹腔鏡下手術総数:2693例 (1993年1月~2005年12月)
アプローチ時 | 手術中 | 手術後 | 計 | |
---|---|---|---|---|
出血 | 0 | 2 | 9 | 11 |
血管損傷 | 5 | 0 | 0 | 5 |
臓器損傷 | 1 | 1 | 2 | 4 |
炎症 | 0 | 0 | 4 | 4 |
水腎症 | 0 | 0 | 3 | 3 |
その他 | 0 | 2 | 5 | 7 |
計 | 6 | 5 | 23 | 34 |